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社会デザイン

ひらめき 「スウェーデンはなぜ強いのか」北岡孝義著 から考える

 事前知識としてのスェーデンと日本の比較表

    スウェーデン 日本  
国連幸福度   7位(北欧上位独占) 58位 2019年
国家理念  

国民の家

なし  
政治(家)への信頼  

高い

低い  
投票率  

80-90%

40-50%  
GDP/1人当たり  

12位(53873ドル)

26位(39306ドル) 2018年
人口   約1000万人 1.3億人 2019年
国土面積   日本の1.2倍    
女性の有職率   76.80%  51.30%  
離婚率   2.8  1.8  
支出(税金) 所得税   約50-55%   2019年
   社会保険料

 7%

   
   小計  約60%  38%  
  消費税 25% 10%  
収入(福祉) 医療費 0円 自己負担多め 2019年
  教育費 0円 自己負担多め  
  託児所 0円 自己負担多め  
  児童手当 1.3万円/人 約1-1.5万円/人  
  育児休暇 有り やすみずらい  
         
国民感情   安心・平等 不安・格差  

 

私が、この書籍から得た所感

税が高いのに不満がなく、高福祉なのに勤労意欲が減退するわけでもなく、2018年度国民幸福度が世界第7位(日本58位)のフシギの国、スウェーデン。
そのフシギをひも解き、原因が分かれば、日本(人類)が得るべきものが見えてくるはずです。

国民幸福度を構成する満足方程式があると仮定します。

まず、満足第1方程式を下記の通り仮定します。
・満足感=よく休み、よく働く
(満足感=夜は熟睡し、昼はよく働く)

これ以下の心理学的レベルまで下りていくことができるが、いまのところ、議論をこのレベルで留めておこう。

スウェーデン社会はこの満足第1方程式をみたしているから、国民満足度が上位になる。(日本はならない)
よく休み:社会福祉の充実
よく働く:一人当たりGDPが12位(日本は26位)

社会福祉は、経済成長の妨げにはならない。経済成長のための必須要件である。
夜は熟睡し、昼はよく働く、様に。

 

以下、詳しく、見ていく。

スェーデンは、福祉(安心・安寧)を充実させるため経済成長を期し、その方法として
全男女国民が参加し、全国民の能力を出し尽くし、GDPを高めるため、下記仕組みをつくった。 
(目標と手段が入り混じる表現になるが、経済成長のためには、福祉(安心・安寧)の仕組みが大きな役目を果たした。)
存分に働く・戦うためには、安心な環境が必要

・労働人材・能力の確保

   苛烈な資本主義自由競争を取り入れ、男女総力戦のため、子供の保育・教育のバックアップが必要
   男女に差をつけず、女性が労働参加できるように、保育環境の充実
   能力発揮の出発点たる子供の環境に差をつけず、平等のスタートラインを用意する
 ➡保育・教育・育休休暇の充実

  衰退産業からの失業者を再教育して新たな産業で働けるようにする
  企業の新陳代謝による失業の受け皿として失業対策をとり、新たな人材の育成で労働生産性を高める
(常に、敗者復活の仕組みがある) 
 ➡積極的失業政策

・生活への安心感

 病気のときの経済的支え
 ➡健康保険

 精一杯働いた後の老後を収入なしで、安心に暮らせる保証
 ➡年金

 (保育・教育・育休休暇の充実・積極的失業政策も安心感醸成になる)

・福祉自体による需要の喚起 

 生活の不安がなく、国民購買が増え、需要を高める
 福祉関連の新たなビジネス創出

スェーデンを福祉大国という表現は一面だけの説明で、スェーデンを正しくは表現していません。
正しく言い換えるなら、
スェーデンは、グローバル資本主義のトップ戦士国であり、そのために必須の福祉(安心・安寧)が組み込まれ、成功した力強い社会
ともいえます。

1国を考える場合、国家収入・国家支出の全体像を考えないとならない。

上記体制を支えている思想・国民性は下記である

スェーデンを支えている思想

スェーデンには確固たる国家の理念があり、それが、社会のいたる面で良い効果を著わしている。
その理念は「国民の家 」であり
国民=子供には、不平等も差別も貧富の差もいらない、という考えが根底にあります。
・国家は国民の家である 
  育児・教育・医療・介護は国の仕事
・子供は国が育てる  
・国が父で国民は子供
という考えです。

この考えが、スェーデンが、社会をデザインしていくときの道しるべとなっています。

政治への信頼 が高いという無形の社会資本

政治への信頼 が高いということも、この国を支えている大きな力になっています。



以下、本書に基づいて、もう少し詳細に述べます。

(1)思想

「国民の家 」という国家理念

  ・子供は国が育てる
  ・国が父で国民は子供
  スウェーデンモデルの思想基盤 であり、1936年にハンソン首相が「国民の家」という国家理念を掲げ、
  続くエランデル首相 が発展させた。
(1936年~ スェーデンモデルはじまる)

「人口論」における福祉の必要性

  経済学者ミュルダール夫妻が提唱した 。
  出産の低下は出産しやすい経済環境を整えることで改善する。

(2)無形の社会資本(政治への信頼/厳しい環境で助け合う

   政治の透明性・情報公開 が非常に高く、国費の使用は、1円でも領収書が必要 
   オンブズマン制度の充実し、市民から役所への不満、疑惑を調査する 
   国会議員は本業をもって、政治は奉仕 という姿勢がある
   投票率80-90% と高い

 心おきなく働き、経済成長のための仕組みとして福祉がある
 福祉を高め、維持するために、心おきなく働き、GDPを高める
 という風に、経済成長と福祉は両輪になっている

(3)有能な政治

持続可能な社会を意識し、長期展望と実現力 を有する
例としては、 

・少子高齢化に直面、対応して、持続可能な年金制度に改善

安心感とは、年金額の多い、少ないではなく、一定の額が持続可能かどうかによると喝破し
下記制度に改善

 ・賦課方式
 ・国が提供する基礎年金の廃止
 ・みなし確定拠出型年金
  所得比例の年金の仕組みとし、競争を保ち、モラルハザードを防ぐ

・私的経済活動と、公的経済活動のきりわけ

  ボルボなどの企業の危機には介入せず
  金融危機時には、民間銀行を国有化

 

(4)スウェーデンモデルの歴史

1946年 エランデル首相の政策

 1.福祉国家の前に経済力を高める
 2.新たな労働力として女性の就業促進
 3.託児所・保育所・育児休暇・育児手当の整備
 4.従来の家族の崩壊 ⇒.社会の軋轢
 5.「国民の家」構想
   子供の教育を国家が担う
   国民の連帯と平等

 

日本がスウェーデンから学ぶこと

・国家の理念を共有する
  スウェーデンにおける「国民の家」のような長期展望に立った国家理念の共有

・国民の信頼を得る政治

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